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今年出会った美しい本たち
主に理系の素敵だった本たち。

まずは、密かなブームが起きている「透明標本」。特殊な薬品を使用して「筋肉を透明化し、軟骨を青く、硬骨を赤く染色」する透明標本の技術を利用した上で補足を加えているアートデザインと云うべき写真集。青い光を当てられ紫に光るチョウザメのベステルとイカは特に美しい。

コラボと言えば、不思議な教養書の「水中の賢者たち」。水中生物の顔面博物館と中国名句を合わせたものだが、馴染みのある名句も 2行で出ると前後が新鮮だったり、知らない名句に感心したりもしながらの美しい水中の風景やユーモラスな魚の顔に微笑んでしまう。名句と写真が必ずしも一致していないのもご愛嬌だろう。

妙に硬派な「歴史の中のカブトガニ」も不思議な魅力のある一冊である。とても可愛らしい「大和本草諸品図」のカブトガニに眼が魅かれるが、片隅にある「三才図絵」の片側 6本の足が生えた魚もまたカブトガニであり、裏表紙の知っている通りのカブトガニは「訓蒙図彙」。日中の古文書を漁った上での考察は多岐に亘り知的な好奇心を満たしてくれる。

手軽で写真と図版が美しいのは「フジツボ」。古今東西の図譜も鮮やかで内容もフジツボが甲殻類である事の説明から、泳ぎ歩く足技を中心とした生態、ダーウィンに愛された歴史、フジツボが成長してパーナクル・グースになると云う中世の伝説、膝の中で繁殖すると云う現在の都市伝説、バルチック海軍の敵となった付着物としての性格、高級食材としてのミネフジツボや南米で輸出を検討しているピコロコ等、薄い本の中にあらゆる話題がひしめいているのも愉しい。

あらゆる楽しみ方と言えば「ひみつの植物」もちょっと変わった植物をテーマに取り寄せ方、育て方、食べ方と至れり尽くせりで、表紙にもなっているガラス細工のような「ハオルシア”オツーサ”」を含む美しい写真と共に何度読み返しても幸せな気分になれる。

美しさで言えば、「アンモナイト」。著者の膨大なコレクションの写真とアンモナイトの構造の説明によって構成されているが、アンモナイトそのものに加えて、モロッコ産の「1個のアンモナイトとアンモナイトを多数含む岩からできた大皿」、「デボン紀のゴニアタイトとその母石から作られたジュエリーボックス」、「カナダのコーカライト社がつくる虹色の”アンモライト”ジュエリー」と云った溜息が漏れる程の加工品が出ているも素晴らしい。

古さで言えばアンモナイトとは比べるべきも無いとしても、2000年前に沈んだ船から引き上げられた、中世以降に発明されたとされている複雑な歯車を持った不思議な機械に魅せられた人々を追った「アンティキテラ」は、文明の衝突が技術の断絶と復活と云うテーマまでを描き出して秀逸なものだった。

人々の挑戦と挫折を描いたものとしては、「ヴォイニッチ写本の謎」も捨てがたい。「ロジャー・ベーコンが仕込んだ暗号の書」と云う触れ込みに翻弄される解読者たちの思い込みに満ちたサイファへの読み込みは滑稽を通り越しているのだが、人間模様とは別に、暗号解読に関する知識やベーコンとその周囲の人々、カタリ派、本草学、魔術、錬金術、医学、精神病理学、降霊術、聖ヒルデガルトの幻視と、話は中世に纏わるオカルトの全てに飛び回り、最後は贋作であり本物であるシュレーデインガーの猫状況を愉しむ事にしてしまうあたりは、謎の写本に相応しい衒学の書に仕立て上げられている。訳文のポップさには賛否があるだろうが、個人的には許せないものではなかった。

スケッチと CG と 工作技術のコラボとして素晴らしかったのは、「ダ・ヴィンチが発明したロボット」だろう。「ダ・ヴィンチ 天才の仕事」も素敵な本だったが、ロボット(からくり人形)の大きさのものを実際の形にしてしまう処まで進めた部分は非常にわくわくするものがあった。尤も出来上がったものへの感動は、それまでの過程に比べると見劣りするのも事実なのだが、それもまたひとつの楽しみ方なのかもしれない。
 
最近の本は写真製版がとても良くなっており、とびっきりの高価な本では無くとも美しいのは非常にありがたい事だとしみじみ思った一年だった。来年もまた。多くの美しい本たちと出会える事を想像するだけで幸せである。
 
しかし美しい写真とかを別にすれば、何といっても理系本での今年度 No.1 は「現代萌衛星図鑑」。萌えを売りにした本の中では別次元の出来。扱われている人工衛星は 7つで、各々を個々の衛星の成り立ちとミッション達成への苦難を、「萌え」と言うには可愛らしい少女で擬人化した事により、人工衛星に関わる人達の思いに感情移入を得やすい仕上がりになっている。特に小惑星探査機「はやぶさ」の章は出色の出来であり、物語のエンディングを 2010年6月の帰還に置くことで、読み終わった後も興味は続く。「萌」の文字がどちらに振れたかは定かではないが、様々な意味で感心し感動した一冊である。まさに日本が誇る技術と文化のコラボと言えるだろう。
評価:
しきしま ふげん
三才ブックス
¥ 1,680
(2009-06-10)

| 本・その他 | 14:14 | comments(0) | trackbacks(0) | pookmark |
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